医療機器(皮膚科)

笑気ガス:セデント サイコリッチ(Sedent Psychorich)


笑気ガスを安心して治療を受けていただくために

初めての方には、事前に笑気ガス(以下「笑気」と略す)吸入を体験していただく事も可能です。

患者さんにとってのメリット

笑気は鎮静作用に加えて鎮痛作用を持っています。そこで笑気吸入鎮静法を用いればリラックスすると共に痛みを感じにくくなります。笑気を吸入させながら局所麻酔を行うと、「痛みをとるための麻酔が痛い」というジレンマが軽減されます。

笑気吸入鎮静法の基礎知識

笑気の特徴

  1. 弱い鎮静・催眠作用と鎮痛作用があります。
    笑気は正式には亜酸化窒素(N2O)と言い、吸入麻酔薬の一種です。鎮静・催眠作用と鎮痛作用を合わせて麻酔作用と呼びますが、笑気は弱い鎮静・催眠作用と比較的強い鎮痛作用を持っていることが特徴です。従って、単独で全身麻酔を行うことはできません。
  2. 鎮静効果の発現と消失は極めて速やかです。
    吸入させると速やかに効果を現し、吸入を中止すると直ちに排泄されるという性質を持っています。吸入中止後数分で帰宅可能となるのはこのためです。
  3. 呼吸器や循環器にほとんど影響を与えません。
    肺や心臓に病気を持っている患者さんにも安全に使用できます。
  4. 肝臓に負担をかけません。
    多くの薬剤は代謝に際して肝臓で分解され、その結果生じた分解産物の薬理作用についても注意が必要になりますが、笑気は体内でほとんど分解されません。

笑気吸入鎮静法の安全性

笑気が麻酔薬として広く用いられているのは、適度な鎮静作用と比較的強い鎮痛作用を持ち、効果の発現と消失が速やかで、重要臓器に影響を及ぼさないためです。鎮静法はこれらの優れた特徴を持つ笑気を30%以下という低い濃度で(全身麻酔で投与する場合は50〜70%)、鼻呼吸により(いつでも口呼吸可能)、70%以上の酸素とともに(空気中の酸素濃度は約21%)吸入させる極めて安全性の高い方法です。

笑気吸入鎮静法が禁忌となるのは?

鎮静法は極めて安全性の高い方法なので禁忌症はありません。但し、以下の患者さんには注意が必要です。

  1. 中耳炎で治療中の患者さん
    夜中の笑気は空気を含む空間に移行しやすい性質を持っています。そこで中耳炎などで耳管が閉鎖している患者さんは、耳に笑気が溜まって内圧が上昇し痛みを訴えることがあります。
  2. 2カ月以内に眼科手術を受けた患者さん
    網膜剥離の手術を受けて眼内に医療用ガスを注入されている患者さんに笑気を吸入させると、これらのガスと置き換わって眼圧が上昇することが知られています。ただし、これらは高濃度笑気を用いた全身麻酔時のデータであり、鎮静法で用いる濃度で問題が生じるかについては明らかではありません。また、ガスは時間とともに吸収されますので、手術から2カ月以上経過していれば、問題なく鎮静法が行えます。
  3. 妊娠初期または授乳中の患者さん
    ラットを用いた研究で笑気の催奇形性を有することが報告されていることから、使用を避けたほうが良いと思われます。
  4. 過呼吸発作の既往がある患者さん
    過呼吸発作は精神的ストレスによって発症するので、鎮静法は発作予防に有用です。しかし、過去に本症の既往がある場合には、笑気吸入を意識しすぎて過呼吸となることがあるので、積極的には用いないほうがよいでしょう。また、同様の理由で発作の治療を目的とした使用にも適しません。
  5. 鼻閉のある患者さん
    禁忌というわけではありませんが、鼻閉があると笑気を吸ができないので、至適鎮静状態を得ることが難しくなります。