そろそろスギ花粉も落ち着いてきましたが、「今年から」もしくは「今年はさらに」花粉症に悩まされた方は多いのではないでしょうか。
花粉症の患者さんの数は年々増加傾向にあり、特にスギ花粉症の患者さん(有病率)は日本全国で4割を超えると報告されています。
今回はスギ花粉症に悩まされている方々への体質改善を目的とした『舌下免疫療法』についてお話できればと思います。
1. 舌下免疫療法とは?
舌下免疫療法とは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量ずつお体のなかに取り込むことで、アレルギーの反応を弱めていく治療になります。
現在、スギ花粉症の方に対してシダキュアというお薬が使用でき、ダニアレルギーの方に対してはミティキュア、アシテアというお薬が使用できます。
※いずれのお薬も保険適用になります。
シダキュアはスギ花粉を原料とするエキスから作られており、少量から内服することで徐々に体に慣らしていき、スギ花粉によるアレルギー症状を和らげることが期待できます。
2. 効果はどれくらい?
花粉症を根本的に改善させることができる治療法になります。
ただし、すべての患者さんで効果がみられるわけではなく、治療が行われた患者さんの約2割で症状消失(治癒)、約6割で症状改善、約2割で効果がないというデータがあります。
3. 治療の対象となる方とは?
以下の項目に当てはまる方は治療を検討されることをお勧めします。
- 花粉症の薬を使用しても症状が改善しない方
- 薬を減らしたい方 または、眠気の副作用で薬が使用しづらい方
- 毎日の服薬と、定期的な通院が可能な方
※少なくとも3~5年間にわたり毎日継続して服用する必要があります。一方で、以下のような方々は治療の対象にはなりません。
- 重度の気管支喘息を合併している方
- 悪性腫瘍、自己免疫性疾患、免疫不全症を合併している方
- 全身性ステロイド薬投与中の方、免疫抑制剤を使用中の方
- 重症の心疾患、肺疾患の方
- 妊婦、授乳婦
4. 治療内容や期間は?
当院では3つのステップで診療を行います。
ステップ1:診察・検査
まずは服用開始前にスギ花粉症の診断が必要となります。
当院では血液検査でスギに対する抗体が検出されるかどうかをチェックし、抗体が陽性の場合に治療の対象となります。
検査費用は3割負担で約6,000円になり、検査結果が出るまでに約1週間かかります。すでに別の医療機関での血液検査でスギ花粉症と診断されている場合は、当院での検査は不要となりますので1年以内の検査結果をご持参下さい。
ステップ2:初回治療
初回の服用は処置室で行います。服用後にアレルギー反応などの副作用が出ないかを確認するために、院内で30分間待機していただきます。異常がない場合、翌日からはご自宅で2000 JAU錠 1日1回1週間服用していただきます。
ステップ3:継続治療
初回服用から1週間後に受診していただき、ご自宅で問題なく服用出来たかを確認します。
その後は、5000 JAU錠 1日1回を毎日服用し、1ヵ月毎に受診していただきます。
注意点
花粉の量が多い時期に治療を開始すると、アレルギー症状が強く出る可能性があるため、開始時期は6月~12月の間になります。また、治療は少なくとも3~5年間継続していただく必要があります。
5. 服薬する上での注意点は?
- 服用後2時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴等は避けてください
- 服用開始初期、スギ花粉飛散期はアナフィラキシー等の発現に注意してください
- 感染症罹患時や体調不良の際、抜歯などの口腔内術後や口腔内に傷や炎症がある場合は服用について医師に相談してください
- 治療を中止する場合は、自己判断で服用を中止せずに必ず医師に相談してください
6. 副作用は?
- 口の中の腫れ・かゆみ・不快感・違和感
- 唇の腫れ
- のどの刺激感・不快感・違和感
- 耳のかゆみ
これらの副作用は高頻度で出現しますが、時間経過とともに改善していきます。
重大な副作用として、
- ショック
- アナフィラキシー
の二つが挙げられます。
アナフィラキシーとは;医薬品投与後に、じんま診などの皮膚症状や、腹痛・嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状を呈します。通常は医薬品投与から30分以内に出現することが多いです。
アナフィラキシーで早期にみられる症状
皮膚症状:じんま診、全身のかゆみ、発赤など
呼吸器症状:声がつまる、鼻がつまる、のどの違和感、咳、呼吸困難、胸のしめつけ感など
消化器症状:吐き気、嘔吐、下痢など
循環器の症状:頻脈、不整脈、血圧低下(めまい、ふらつき)など
眼の症状:視覚狭窄、視野の狭窄など
神経の症状:意識の混濁など
服用後にこれらの症状がみられた場合は、ただちに救急車を要請するなど迅速なご対応が必要になります。
これら副作用や出現時のご対応方法については非常に大切な内容になるため、お薬を始める際にしっかりとご説明させていただきます。
7. 費用面は?
病院での診療代とお薬代を合わせて、1ヵ月あたり約2,000円になります(3割負担の場合)。
6月から治療が開始出来ますので、これまで花粉症でお悩みの方や薬が効きづらくなった方はお気軽にご相談くださいね。
参考文献:厚生労働省ホームページ「アナフィラキシー」
秋葉原内科シンシアクリニック 院長 角田昇隆