乾癬と向き合う多くの患者さんが「治療をすれば今よりも症状が良くなるのか、症状が抑えられるのか不安。」「かゆくて夜の眠りが浅く、昼間に眠気がある。」「気づいたら日中も知らずにかいてしまっている」など同じような悩みを抱えています。ソーティクツは乾癬に効果がある飲み薬です。まずは、乾癬について詳しい説明と治療法をお伝えします。
乾癬とは
乾癬は、慢性に続く、皮膚の炎症を中心とした病気です。
乾癬の患者さんでは遺伝的素因によって免疫が異常に活性化しており、その結果、皮膚の細胞の増殖が早まり、皮膚の角化や炎症、表面が剥がれ落ちる、といった症状があらわれます。
乾癬が起こるしくみ
遺伝的な要因、炎症の起こりやすさ 等
環境の要因
ストレス、季節、感染症、薬剤 等
免疫の異常
炎症症状
乾癬の治療では、皮膚症状を良くしたりかゆみ等の症状を減らしたりすることで、毎日の生活を過ごしやすくすることを目標として進めていきます。
どのような状態になりたいのか(=治療の目標)について、医師に自分の思いを伝えてみましょう。同じ目標に向かって治療が進められているか、医師と話し合って常に確認していくことが大切です。
乾癬の分類
乾癬は慢性に起こる皮膚の病気であり、遺伝的な要因と環境の要因が重なることで発症すると言われています。主に次の5つの病型に分類され、それぞれ少しずつ症状が異なります。
■尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
尋常性乾癬は、全体の7〜8割を占めます。銀白色の鱗屑を伴い、境目が明瞭な盛り上がった紅斑が全身にあらわれます。症状は、初めに頭、ひじ、ひざ等に出ることが多く、症状が出ている範囲が広くても、かゆみがあまりない方もいます。
■膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
膿疱性乾癬は、全体のおよそ1%程度です。発熱、全身の倦怠感(けんたいかん)を伴い、全身の皮膚に潮紅と無菌性の膿疱があらわれます。全身的な治療や入での治療が必要になることがあります。
■乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
乾癬性紅皮症は、紅斑と鱗を特徴としており、皮疹が全身の大部分(8割以上)を覆っています。尋常性乾癬、膿疱性乾癬から移行することがあります。
■滴状乾癬(てきじょうかんせん)
滴状乾癬は、細かい皮疹(数mm〜1cm程度)が短い期間にあらわれます。上気道炎や扁桃腺炎のあとに症状があらわれることがあります。
■乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
乾癬性関節炎では、乾癬の皮膚症状に加えて関節の腫れ・痛み等の関節炎の症状が出ます。皮膚の症状は軽度でも関節炎は強くあらわれることもあり、乾癬と診断されたあと、数年経ってから関節炎の症状が出る場合が多いと言われています。
乾癬の重症度
乾癬の重症度は治療法を決めるうえで一つの指標となります。この写真は、乾癬患者さんの皮膚の重症度を紅斑、鱗に基づいて分類したときの目安です。
乾癬の治療法について
乾癬の治療は、塗り薬、光線療法、飲み薬、注射薬等を患者さんに合わせて選択します。これらは必ず使用する順序が決まっているわけではなく、症状に合わせて単独で使用したり、組み合わせて使用したりします。
塗り薬
塗り薬は、局所療法に分類され、治療の初期に使われるほか、飲み薬等の全身療法と併せて使用することもあります。ステロイドやビタミンD3の塗り薬、またはそれらの配合剤等があります。
ステロイド
炎症を抑える薬です。強さが5段階に分かれており、症状によって使い分けます。
ビタミンD3
皮膚が過剰に増えてしまう状態を抑える薬です。
光線療法
光線療法は、塗り薬で十分に効果が得られない場合等に使用します。また、飲み薬や注射薬と併用することもあります。全身に使用するナローバンドUVB療法やPUVA療法、部分的に使用するエキシマライト/レーザー療法等があります。
飲み薬
飲み薬は、全身療法に分類される治療法です。TYK2阻害薬、レチノイド製剤、PDE4阻害薬、免疫抑制剤等を使用します。
チロシンキナーゼ2 (TYK2)阻害薬
免疫機能を助けるTYK2という物質のはたらきを制御し、免疫がはたらきすぎるのを抑制することで炎症を抑える薬で、飲み薬の乾癬治療薬の中でも新しい薬です。
レチノイド製剤
皮膚が過剰に増えることを抑える薬です。
PDE4阻害薬
炎症の原因物質の産生にかかわるPDE4のはたらきを抑え、免疫のバランスを整えることで炎症を抑える薬です。
免疫抑制剤
免疫がはたらきすぎることを抑える薬です。
注射薬
他の全身療法で十分な効果が得られなかった場合等に選択される治療法で、生物学的製剤と呼ばれる薬を使用します。生物学的製は、免疫機能にかかわる部分に作用し、免疫がはたらきすぎることを抑えます。
ご紹介した乾癬の治療法は、重症度や患者さん個々の状況に合わせて、様々な選択が可能です。
ご自身の治療法について医師と相談の上、決めていきましょう。
治療中に注意すべきこと
感染対策、食事、睡眠、運動不足、強いストレス、洋服、入浴、飲酒などに注意し、心がけましょう。
最後に
限られた診察の時間で医師に自分の考えを伝えるためには、乾癬に対するご自身の今の考えや気持ちを整理しておくことが大切です。普段から日々の症状や気になったことをノート等にメモしておき、医師に伝えたいことを診察の前にまとめておくと良いでしょう。
乾癬への理解を深めることで少しでも不安が和らぎ、治療に前向きに取り組むきっかけとしていただけたらと考えています。新薬のソーティクツは光治療や注射などと違い、飲み薬で改善できる可能性がある時間と身体的負担の少ない薬です。
不安なところがありましたら、亀戸シンシア皮膚科医師にご相談ください。
※当院では乾癬を判断するのみで、ソーティクツの飲み薬が適用(飲めるか)は、医師と紹介先の医師の判断になります。
亀戸シンシアクリニック 皮膚科医師
ソーティクツ®の適応について
乾癬は難治性の慢性皮膚疾患であり、遺伝的な要因と環境の要因が重なることで発症すると言われています。主に5つの病型に分類され、それぞれ少しずつ症状が異なります。ソーティクツ®はこの5つのうち、以下の3つに適応があります。(2023年12月現在)
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
ソーティクツ®のはたらき
乾癬患者さんでは、遺伝的な要因や環境の要因によって免疫が異常に活性化しています。免疫の異常には、複数のたんぱく質がかかわっていることが知られています。その結果、皮膚の細胞増殖が早まり、皮膚の角化や炎症、表面が剥がれ落ちる、といった症状があらわれます。
山本俊幸 編:乾癬・掌蹠膿疱症 病態の理解と治療最前線, p2,54, 中山書店, 2020 より作図
ソーティクツ®錠6mg電子添文2023年12月改訂(第3版)
ソーティクツ®は、TYK2というたんぱく質のはたらきを抑えることにより、TYK2がかかわる免疫反応を抑えることで乾癬の症状を改善すると考えられています。
小宮根真弓 他編著:困ったときに役立つ STEP UP 乾癬診療, p30, メディカルレビュー社,
ソーティクツ®錠6mg電子添文
ソーティクツ®の薬剤費について
ソーティクツ®の薬剤費
※令和6年8月現在の薬価を元に計算
※1:診察費、検査費をお支払いされる場合、同時に他の薬剤が処方された場合等は、実際の窓口負担額と異なることがあります。
日本の医療保険について
日本では、国民全員が保険に入る「国民皆保険制度」が採用されており、病院や薬局等で発生する医療費のうちの3割を患者さんが負担し、患者さんが所属する保険組合や保険協会等が残りの7割を負担しています※2。
医療費自体が高額になった場合は患者さんの自己負担も高額になってしまうため、負担を軽減するための助成制度が設けられています。
この医療費助成制度の一つとして、高額療養費制度があります。
これは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が一定の金額※3を超えた場合に、超えた金額を公的機関が支給する制度です。
年齢や生活の状況等によっては、申請を行うことにより医療費のサポートを受けられる可能性があります。詳しくは自治体の窓口や保険組合にお問合せください。
※2:負担割合は、患者さんの年齢や所得等により異なります。
※3:自己負担上限額は、年収や入っている保険によって異なります。
「我が国の医療保険について」(厚生労働省(⇒)(2023/10/24 access)
小宮根真弓 他編著:困ったときに役立つ STEP UP 乾癬診療, p148-157, メディカルレビュー社, 2019
亀戸シンシアクリニック
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