皮膚科で使用されるニキビ治療薬の特徴は?

あなたの肌にあったニキビ治療薬は?薬の特徴や効果について解説します

ニキビは90%の人が経験する身近な病気で「青春のシンボル」といった考えられることもありますが、尋常性痤瘡という皮膚疾患です。化粧品やスキンケアのみで対応する方も多いですが、放置をしてしまうと痕に残ることもあるため症状が軽微なうちから皮膚科で治療を行うことが大切です。新しい薬も発売されたことにより早期の症状から治療が可能となりました。本コラムでは皮膚科で処方される代表的なニキビ薬の特徴や効果についてご紹介します。

1.ニキビの種類と重症度
 (1)ニキビの種類とでき方
 (2)ニキビの重症度
 (3)急性期治療と維持治療
2.ニキビの塗り薬
 (1)毛穴の詰まりを改善する薬(白ニキビに対して行う治療)
 (2)赤ニキビに対して行う治療
 (3)保湿目的に使用する薬
3.ニキビの飲み薬
 (1)内服抗菌薬
 (2)漢方薬
 (3)ビタミン剤
4.わたしにはどのニキビ薬があっていますか?
 (1)軽症のかた(お顔全体で赤ニキビが10個以下)
 (2)中等症のかた(お顔全体で赤ニキビが10から40個)
 (3)重症のかた(お顔全体で赤ニキビが40個以上)

1.ニキビの種類と重症度

ニキビは重症度やニキビの種類(進行段階)によって異なります。このため治療方法の前にご自分のニキビのタイプや重症度を知ることが重要です。

(1)ニキビの種類とでき方

毛穴がつまった状態であるコメド(面ぽう)からニキビは発生します。「白ニキビ」や「黒ニキビ」と呼ばれることもあります。触ると肌がざらざらした感じがします。コメドを放置すると炎症を起こした「赤ニキビ」や化膿した「黄ニキビ」へと悪化してしまいます。適切な治療をしないと「ニキビ痕」になってしまうこともあります。このためニキビ治療は毛穴の詰まりを改善するコメド治療が重要となります。

  1. 毛穴からの皮脂の分泌が増え、毛穴の角質異常が生じる
  2. 皮脂が毛穴に詰まって非炎症性丘疹(白ニキビ)が形成される
  3. アクネ菌などの菌が白ニキビに感染し、痛みを伴う炎症性丘疹(赤ニキビ)になる
  4. 赤ニキビが悪化すると膿をもった膿疱性痤瘡となる
  5. そのまま放置すると瘢痕(ニキビ痕)になる

(2)ニキビの重症度

炎症性皮疹(赤ニキビや黄ニキビ)の数によって重症度を判断します。

(3)急性期治療と維持治療

炎症を起こした赤ニキビがある場合にはまず抗菌薬による外用薬や内服薬を含めた急性炎症期の治療を行います。赤ニキビの多くが平らになってきたら維持治療に以降します。目につきやすいニキビが治っても、コメドが炎症を起こし、次の目立つニキビになる可能性があるため、コメドに対する治療を継続することが重要です。

  1. 毛穴のつまり(白ニキビ)の段階で炎症が始まる前にできるだけ早く治療を開始します。
  2. 早期から毛穴の詰まりを改善し、白ニキビに効く外用薬を使用します。
  3. 炎症がひどいニキビでは外用・内服の抗菌薬を併用します。
  4. 抗菌薬治療は「急性炎症期のみ」「中等症以上」「最長3カ月」が原則です。

治療薬にはどのような薬がありますか?

ニキビ治療には毛穴の詰まりを改善する薬、ニキビ菌を殺菌する抗生物質、ビタミン剤、漢方薬、抗ホルモン剤などがあります。炎症性ニキビの原因となる白ニキビをできづらくするアダパレンや過酸化ベンゾイルを中心に根本治療薬を中心に治療を行います。

2.ニキビの塗り薬

(1) 毛穴の詰まりを改善する薬(白ニキビに対して行う治療

毛穴の詰まりを改善する薬は4種類ありますが、成分としてはアダパレンと過酸化ベンゾイルの2種類しかありません。

1.ディフェリンゲル(アダパレン)
皮膚のターンオーバーを促進し、皮膚が厚くなる作用を調整することにより毛穴の詰まりを改善させ、コメド(白ニキビ)をできにくくする塗り薬です。毛穴に皮脂が詰まった状態である白ニキビの効果が特に高いことが特徴で、赤ニキビへの悪化の予防に繋がります。
現在あるニキビを改善する急性炎症期の治療のみではなく、ニキビが改善した後の良い状態を維持するためにも推奨される薬です。

2.ベピオゲル・ベピオローション(過酸化ベンゾイル)
皮膚表面の古い角層を取り除き、毛穴の詰まりを改善することにより白ニキビを減少する作用があります。また、ニキビの原因となるアクネ菌や黄色ブドウ球菌への抗菌作用や抗炎症作用があるため赤ニキビに対しても効果を発揮します。
現在あるニキビを改善する急性炎症期の治療のみではなく、ニキビが改善した後の良い状態を維持するためにも推奨される薬です。

3.デュアック配合ゲル
過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンという抗菌薬が有効成分の塗り薬です。
抗菌薬が含まれているため赤ニキビを主体とした急性炎症期に適しています。抗菌薬を漫然と使用すると耐性菌が出現する可能性があるため、漫然と使用せず概ね12週までの仕様が望ましく、維持期にはベピオ(過酸化ベンゾイル)に変更します。

4.エピデュオゲル
過酸化ベンゾイルとアダパレンが有効成分の塗り薬です。過酸化ベンゾイルとアダパレンの効果によろい毛穴の詰まりを改善し白ニキビを減少サせる作用があります。過酸化ベンゾイルの抗菌、抗炎症作用により赤ニキビにたいしても効果を発揮します。
中等症から最重症の炎症がひどく生じた赤ニキビによい適応があります。また、萎縮性瘢痕(凹んだニキビ跡)を予防するエビデンスがあるため維持期での使用にも適しています。

(2) 赤ニキビに対して行う治療

ニキビ菌を殺菌するための抗生物質の外用薬です。急性炎症期でも抗生物質外用薬のみを使用するのは望ましくなく、毛穴の詰まりを改善する薬と併用します。

(3)保湿目的に使用する薬

ヒルドイドローション、ビーソフテンクリームなどを使用します。

3.ニキビの飲み薬

(1)内服抗菌薬

赤ニキビ、黄ニキビなどの炎症性ニキビには抗菌薬の内服が強く推奨されています。ニキビの炎症の現任となるアクネ菌を殺菌するのみでなく、炎症を抑える効果を併せ持つ抗菌薬を使用します。ただし、耐性菌を防ぐために1.5-2ヶ月で効果と継続の必要性を判断し、投与は3ヶ月以内とすることが推奨されています。

(2)漢方薬

漢方薬はニキビ治療で補助的な役割をもっており、日本皮膚科学会のガイドラインでは推奨度C1(他の治療が無効であれば推奨する)となっています。難治性ニキビでできる限りの治療を行いたい方、以前使用されて効果が認められたため継続を希望される方にはよい適応です。

(3)ビタミン剤

ビタミン剤のニキビへの効果は明確にはなっていませんが、体質改善やニキビ予防、ニキビ治療の補助的な位置づけで処方されることがあります。

4.わたしにはどのニキビ薬があっていますか?

(1)軽症の方(お顔全体で赤ニキビが10個以下)のかた

白ニキビや黒ニキビのみの場合はベピオローションもしくはディフェリンゲルといった毛穴の詰まりを改善する塗り薬を使用します。赤ニキビが混在する場合は抗生物質の塗り薬を併用します。抗生物質の内服は白ニキビには効果がなく、耐性菌の原因となるため原則使用しません。

10歳代前半の額や鼻のTゾーンを中心に白ニキビがある方
治療例:ディフェリンゲル
白ニキビに改善効果が高いディフェリンゲルを使用します。白ニキビに対しては抗生物質の塗り薬や内服は効果がなく原則使用しません。

10歳代後半で赤ニキビが額に認める方
治療例:デュアック配合ゲル
ビブラマイシン錠 1週間程度内服
炎症性ニキビのある方には抗菌薬配合のデュアック配合ゲルが有効です。短期間抗菌薬内服を併用することもあります。

20歳代女性で生理前にニキビが悪化する方
治療例:ベピオローション
ヒルドイドローション
桂枝茯苓丸加慧苡仁

30歳代女性で白ニキビと赤ニキビが混在する方
治療例:デュアック配合ゲル
白ニキビに改善効果が高いディフェリンゲルを使用します。白ニキビに対しては抗生物質の塗り薬や内服は効果がなく原則使用しません。デュアックは長期間使用せず、赤ニキビが改善してきたらベピオローションに変更し維持期に移行します。

(2)中等症(お顔全体で赤ニキビが10から40個)のかた

赤ニキビ

20歳代女性で赤ニキビが多発する
治療例:デュアック配合ゲル
ビブラマイシン錠 4週間程度内服
十味敗毒湯 4週間程度

20台女性でディフェリンやデュアックの使用歴がある慢性化したニキビ
治療例:エピデュオゲル
ゼビアックスゲル
荊芥連翹湯 4週間程度
ヒルドイドローション

(3)重症(お顔全体で赤ニキビが40個以上)のかた

最も効果の期待できる外用薬や内服薬などの保険診療を併用します。保険診療のみでは改善が困難な事例も多く、ケミカルピーリングやホルモン療法(低用量ピルやスピロノラクトン)、イソトレチノイン内服などの自費診療も考慮する必要があります。

初めて皮膚科で治療する嚢胞も多発する10歳代後半の男性
治療例:エピデュオゲル
ビブラマイシン錠
4週間程度内服

これまでの治療状況やお肌の状態に合わせて適切なニキビ治療薬を提案させていただきます。診療を予約のうえ医師にご相談ください。

シンシア医師