ニキビ治療の切り札であるイソトレチノインの効果や副作用などついて解説します
イソトレチノインはニキビの切り札といえる内服薬で国内では未承認ですが、欧州や米国のガイドラインでは中等症から重度のニキビに対して推奨されている薬です。副作用に注意しながら使用すれば高い治療効果が見込まれる薬であり保険診療で改善しない方にはよい選択肢となります。再発の予防効果がある(根治が期待できる)、重症の炎症性ニキビにも効果が高いといった特徴があり、中等度以上の繰り返すニキビや難治性のニキビ、ニキビ跡が残りやすい方などによい適応があります。
1.イソトレチノインの適応となるかた
2.イソトレチノインの効果
3.イソトレチノインの副作用
4.イソトレチノインによる治療を受けられないかた
5.診療の流れ
6.イソトレチノインによる治療方法
7.その他注意事項
8.イソトレチノイン治療の料金
1.イソトレチノインの適応となるかた
イソトレチノインは海外では重症ニキビの有効な治療薬として認知されていますが、国内では承認が得られていないため保険が適応されません。ニキビの国際的なガイドラインであるグローバルアライアンス(Global Alliance)による痤瘡治療アルゴリズムでは重症、最重症の治療薬として推奨されています。
2.イソトレチノインの効果
(1) 皮脂の分泌を減少
イソトレチノインを内服することで皮脂腺を退縮させ、皮脂分泌を大きく減らす作用があります。
(2) 毛穴の詰まりを減少
過剰な角化を抑えることにより、コメド(白ニキビ)の発生を抑えます。
(3) アクネ菌の増殖を抑える
微小環境を変化させることで抗生物質よりもはるかにアクネ菌の増殖を抑制します。
中等症のニキビ患者に対して20mg/日の投与を行うことで98.99%の患者が改善すると報告されています。また、重度のニキビ患者に対して1mg/kg/日の投与により90%の患者で95%以上の炎症性ニキビの減少がみとめられました。
内服終了後も長期間効果が持続することが報告されており、再発率は30-40%程度と言われています。つまり60-70%で完治が期待できるということになります。
3.イソトレチノインの副作用
- 皮膚の乾燥、口・鼻・眼の粘膜の乾燥:ほぼ100%の患者さんに起こります。
- 乾燥に伴う皮膚炎や赤ら顔、鼻出血も60-70%の患者さんで起こります。
- 稀な合併症として潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、アナフィラキシー、うつや自殺などの報告もあります。
- 胎児の催奇形性;中枢神経系の奇形、耳の欠損や奇形、目の異常、心奇形、口蓋裂、胸腺や副甲状腺の奇形が報告されています。内服期間注及び内服前後1ヶ月間は必ず避妊を行う必要があります。もし妊娠が判明した場合は服用を中止のうえすぐに担当医に相談をしてください。低容量ピルとコンドームなど複数の方法で避妊を行ってください
- 肝機能障害;投与前、投与1ヶ月後、以降適宜血液検査を行う必要があります
4.イソトレチノインによる治療を受けられないかた
- 妊娠中のかた、妊娠の疑いのあるかた
- 授乳中のかた
- 成長期のかた骨端製の閉鎖により身長が伸びにくくなる可能性があります。
- イソトレチノイン製剤、トレチノイン製剤、ビタミンAでアレルギーを起こしたことのあるかた
- テトラサイクリン系の薬剤を内服されている方(ミノマイシン(ミノサイクリン塩酸塩)、ビブラマイシン(ドキシサイクリン塩酸塩)、レダマイシン(デメチルクロルテトラサイクリン塩酸塩)、アクロマイシンV(テトラサイクリン塩酸塩))
- うつ病もしくはうつ気質のかた
- 重篤な肝機能障害や腎機能障害のあるかた
- 中性脂肪、コレステロールが非常に高いかた
- ビタミンA過剰症のかた
5.診療の流れ
(1) 初回診察と事前採血
①これまでの治療歴や現在のニキビの状態を確認し、イソトレチノイン治療の適応を判断します。
②イソトレチノイン治療の効果と治療上の注意についての説明をした上で、ご了承いただければ同意書にサインを頂戴します。
③治療開始前の採血を行います。
④治療を開始(肝機能障害や脂質異常症を指摘されたことのある方は採血結果をした後に開始となるため1週間後に再度受診をしていただきます)
(2) フォローアップ
① 4週間後に再診となります。採血により肝機能障害などを生じていないか確認を行います。
② 1-2ヶ月ごとに定期的に通院します。
6.イソトレチノインによる治療方法
- イソトレチノイン 20mgを1日1回1錠食後に内服します。
- 治療開始後1-2週間は約3割の患者様に一過性のニキビの増悪(好転反応)が認められます。焦らず内服を継続していくと、約4-6週間で症状は落ち着きます。
- 16~24週間ほどで効果が期待できます。早い方では4~12週間で効果があらわれます。ニキビが改善してからも再発を防ぐために治療を継続する必要があります。
- 皮膚の状態や副作用の状態を判断し、ニキビの改善が乏しい場合には増量していきます。推奨用量は0.5mg~1.0mg/kg/日で、極量は2mg/kg/日です。
治療期間は4-6ヶ月となります。まずは5ヶ月間内服し、治癒していない場合は追加で1ヶ月内服します。
・再発を防ぐためには120-150mg/kgの累積投与量が必要と言われていますが、日本人ではこれより少ない投与量でも寛解状態を維持することができると言われています。(体重60㎏、治療期間6カ月間とすると、120㎎/kg以上になるための1日内服量は40mg以上となります。)
・イソトレチノイン後再発の兆候が見られることがありますが、軽度であることがおおくベピオゲルやディフェリンなどの外用薬を中心に治療を行います。それでも改善しない場合は最低2ヶ月(できれば6ヶ月)の間隔をあけて2クール目のイソトレチノイン内服治療を開始することもあります。
7.その他注意事項
- イソトレチノインの治療期間中、治療後6ヶ月はピーリングやワックス脱毛はお控えください。
- 治療中、侵襲の強いレーザー治療はできません。
- 治療中、治療後最低1ヶ月間は献血ができません。
8.イソトレチノイン治療の料金
アクネトレント 20mg 30日分 16,700円
イソトレチノインの処方は自由診療となります。
※薬剤の他に以下の通り初診料(再診料)や採血料金が必要となります。
シンシア医師